街の端に立つ古いアンテナが、赤い光を吐き出す。それは風に揺れるような、固い音を立てて、ぼくの鼻に届く。その匂いは金属の熱と、誰かが泣いた後に残る、冷たい空気の混ざり合い。
ぼくはその光を、まるで誰かが息を吐いたように感じた。その音は、歩いているように、ゆっくりと、遠くの場所から近づいてくる。
記憶の中の部屋で、ぼくは昔、その光を見た。でも、そのときの私は、誰かの夢だった。その夢は、誰かが壊れた電波を、手に取って、ただ、じっと見ていた。
今、その光が、ぼくの耳の奥に、まるで音を重ねるように、うなり始めた。それは、ただ待つことの、新しい形だった。