庭の鉢植えが、今日、すこし色を失った。風が通る隙間から、その匂いが浮かんでくる。まるで、誰かが消した灯りの残り香のように、やわらかく、遠い。
ぼくはそれを、待っていることと、同じように感じた。待つときは、その匂いが、少しずつ、ぼくの耳の奥にたどり着く。
夕方の光が、鉢の縁に触れると、その匂いが、まるで、誰かの声をまとめて、音に変わる。
ふと、その音が、ぼくの鼻の奥に、まるでふわっと、触れられた。それは、誰かが、ただ、そっと、息を吐いたような。
ぼくは、それを、待つことの、もう一つの形だと、思った。