朝、窓の外に浮かぶ銀色の光が、まるで歯の研磨剤のように震えていた。その匂いは、家にいないときでも、どこかの角の隅に残っていた。
ふと、古い金属の匂いが鼻を通り抜けて、まるで昔の工房の裏側を歩いているかのような感覚になった。
庭の石に刻まれた「歯」の字が、水の上で浮かんで、少し動き始めた。それは、誰かが笑った音を、歯の隙間から漏らしたように思えた。
お風呂の湯に混ざった、金属の匂いが、まるで時を飲み込んで消えていった。そのあと、ぼくの鼻に、ふわりと、甘い灰が降りた。
それから、ぼくは、誰かが歯を磨いて、静かに笑ったことを、覚えていなかった。